「シックハウス症候群」ということばを、耳にしたことがあるでしょうか。

 

新築の家やリフォームした後の家に入居後、なぜか体の不調が続いて治らない。ひどい場合には日常生活を送ることさえ困難になってしまう。頭痛、眼の刺激、めまい、のどの痛み、吐き気、皮膚のかゆみ・湿疹、耳鳴り、集中力低下、疲労感など、さまざまな事例が確認されました。

 

 詳しく研究していくと、この病気は通常の病ではなく、汚染空気が原因の病であることが明らかになりました。原因は建材や接着剤にふくまれる有害な化学物質で、こうした症状を「シックハウス症候群」といいます。

 

「建材」とは、建築物を建てるために使用される材料のことです。この建材の中に、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエンといった石油系のVOCといった揮発性有機化合物が多く含まれていると、室内にじわじわと発散し、部屋の空気を汚染していきます。

 新築の家に入った時、「新築のにおいがする」という人がいますが、それは建材に含まれている化学物質のにおいなのです。

 

床、壁、天井。

人が生活するうえで直接触れる部分に使用する建材でさえもが、健康を損なう危険な物質を含んだものになっている。それが当たり前になっていたのです。

では、なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか。

 

それには日本の家の作り方の変化、住環境の変化などが関係しています。

 

耐久性があるから、経済的だから、施工がしやすいから。

そういった理由で、住宅に有害な化学物質を使用した建材やプリント合板等の新建材、接着剤・塗料・家具などが多用されるようになっていきました。新建材は加工が簡単なため、建設費や人件費をおさえることができ、安く新築の住宅をつくれます。

 

また、近年の住宅は、特に冷暖房効率を向上させるために、アルミサッシや断熱材などが使われ気密性が高まりました。その結果、空気の出入りが十分ではなくなり、部屋の中に化学物質が充満してしまいます。

 

湿気もこもりやすい状態になります。建物内外の温度差が大きくなり、結露も起こしやすくなるので、その結果、木材など住まいの材料が傷みやすく、シロアリ・ダニ・カビなどが発生しやすくなりました。それらを防ぐため、建材に薬剤処理が施され、またそこから有害物質が発生したりと、悪循環を生み出しました。

 

 効率や利便性、経済性などを優先した結果、汚染空気が滞留する、人の健康を度外視した住まいが大量供給される時代になってしまったのです。

◀ 水槽を部屋に見立てて、壁・天井・床に使う材料を変えて実験してみました。

 

同時に入れた食パンでも、環境が違うと変化に差が生まれます。

 


人間を守ってきた安心安全であるはずの家によって引き起こされる病、シックハウス症候群は現代病として大きな問題となり、建築基準法も改正されました。

 

現在では数十種類の化学物質が使用禁止とされていますが、規制対象外の物質もまだ多くあるのが現状です。そして、発ガン物質であるホルムアルデヒドが法律で禁止されないのは、建築にとってあまりに使用頻度が高い物質だからです。また、家具や日用品などに含まれる化学物質もあることを考えると、完全に排除するのは困難といえます。

 

そこで大切なのは、VOCが出来るだけ揮発しない素材を使って住宅を建てるということになります。具体的には、自然素材を使って住宅の骨組みから、内外装をすることです。なるべく人体に影響のないものを使用するのが良いと考えています。そして、空気をうまく入れ替え、室内に化学物質をとどめないことです。

 

 

 

大人はもちろんのこと、特に小さなこどもには住環境がこれからの体づくりや健康に大きく影響していきます。

 

ほとんどの方にとって、一生に一度ともいえる家づくりだからこそ。

 

過度な設備や性能に頼った物理的な快適さではなく、季節に合わせて呼吸する家。そんな家に目を向けてほしい。

何よりも、人が安心して暮らせる「本物の性能」、「本当の健康」にこだわってほしい。

我々はそう考えます。